役所手続き

留学・ワーホリの方は、渡航前に海外転出届けなどの役所手続きを行う必要があります。以下で留学・ワーホリ前に行うべき主要な役所手続きについて解説していきます。

なお渡航準備にあたって以下のページもご覧下さい。

海外転出届とは

海外転出届とは、国外に一年以上滞在する場合または海外移住する時に行う届け出のことです。この届け出を提出すると日本からの住民登録がなくなり、非居住扱いになります。

役所で相談すると「一年以上国外に滞在する場合は海外転出届を出すように」と薦められますが、届けの提出は強制ではなく、本人の判断に委ねられます。


また、届け出をすることでメリット・デメリットの両面が生じるので、以下で理解した上で届け出の判断をしましょう。

届けを出す場合

滞在予定が一年以上の方は出すルールになっています。(ワーホリで一年滞在、また学生ビザで一年以上滞在する人など)

これに伴い住民税、国民健康保険、国民年金は以下のようになります。

住民税、国民健康保険、国民年金はどうなる?

  • 住民税を払う義務が無くなります。ただ届けを出す前年の所得に対しては支払う義務が生じます。
  • 国民健康保険も払う義務が無くなります(住民票が無いと加入出来ない)。転出届によって自動的に解約状態になります。未加入になってもそれが将来の公的保険の受給額に影響する事もありません。ただ留学中も健康保険に入っていたら海外の治療費も所定の手続きで日本と同じ割合(7割)で国が負担をしてくれます。
  • 国民年金も払う義務は無くなりますが、任意で支払い続ける事も出来ます。節約して少しでも留学に資金をまわしたい場合は年金も解約しておくのが無難です。年金受給額を減らしたくない場合は払い続ける方が好ましいと言えます。

なお転出届を出した留学中の方が日本に一時帰国する場合は、日本にいる間は無保険の状態となりますのでご注意下さい。 この場合は医者に世話にならないよう気をつけるか、カナダの民間保険で海外(日本)旅行中にカバーされる保険に加入する必要があります。

海外転出届けを出さない場合

滞在予定が一年未満の方は出す必要はありません(観光、および学生ビザ・ワーホリで一年未満の時)

留学中も住民税・健康保険・年金を支払う義務が発生します。出費が痛いと思う方もいれば、何かあったときに一時帰国して日本の医療を受けられるように・・という考え方のいます。また年金は払い続ける事に無駄がある訳ではありませんし、住民税は日本で所得が無ければ発生しません。短期間であれば、実質大きな出費では無いかもしれません。

海外転出届の手続き方法

市町村によって異なりますが、役所にある申請書に住所や本籍を書いて窓口に出せば終了です。手続きのタイミングは、出国の14日前から当日までとされています。

帰国して再転入する場合

帰国して再転入する時はパスポートと印鑑が必要です。パスポートの入国スタンプで帰国日を確認し、そこから淳民表や保険・年金が有効となります。また本籍で無い所に転入する場合さらに戸籍附票と戸籍謄本が必要です。手続きは帰国後14日以内に行う必要がありますのでご注意下さい。

住民税

住民税は前年度の所得額に基づいて、その年の6月から翌年5月まで一年間で支払う義務があります。会社員の場合は毎月引き落とされます。退社して自分で払う場合は、6月10日頃に納付書が発送され、年四回のペースで支払う事になります。6月に届く納付書の支払い先は、その年の1月1日に住民票のあった市町村となります。

退社した場合は、退社前一年間に対する住民税を払う事になるので、たとえ退社してすぐに留学したとしても、一年間は支払う義務があります。留学期間が長い場合は、納付書の送付先を家族の住所にした上で振込みの依頼をしておきましょう。

退社してから5月までの期間は、退社時に会社から一括で引き落としが発生します。私の場合は3月の給料をもらった後に会社が手続きをしているので、4、5月分の住民税が退職金から相殺される形で支払いが行われました。

国民年金

年金とは国民全てが加入する制度で、法律によって加入と保険料の支払いが義務付けられています。保険料を納める期間は20歳から60歳までの最長40年間で、年金の受け取りは65歳からです。。

年金を受け取るには最低10年間は支払っている必要があります(受給資格期間)。例え10年以上払い続けていても40年未満であれば65歳になってから受け取る年金額が減る事になります。つまり40年間分を全て払う事が受給額の観点では理想という事です。 

海外滞在中の年金支払い

海外滞在中に住民票を残す場合、年金の支払い義務が発生します。海外転出届を出した場合は義務では無いため、支払う必要はありません。

海外に住所を移していた期間はカラ期間(合算対象期間)と呼ばれ、保険料を払っていないため年金額の計算対象にはなりませんが、受給資格期間にはカウントされます。つまり、「保険料を納付した期間」+「カラ期間」の合計が最低10年以上あれば年金の受給対象に該当するということです。

支給される年金額が減ることを避けたい場合は、住民票を抜いた上で任意で支払うことも可能です。この場合は役所の窓口で任意加入の手続きをとる必要があります。

年金未納金のカバー方法

留学中は収入が無い場合が多いため、年金の出費を抑えたいと考える方も多いですよね。以下の方法で未納期間をカバーすることができます。

1)二年以内に払う

国民年金は二年間さかのぼって支払えるため、留学期間が二年以内なら、帰国後に支払えば空白期間を作らずに済みます。ただし、二年を超えると未納期間に含まれ、後払いができなくなるので注意しましょう。
(ただし以下に述べるように60歳を過ぎてから補う事は可能)。

2)60歳過ぎた時に不足分を払う

60~65歳の5年間は任意で年金を納められるため、60歳以上になった時に未納期間分を支払うことができます。未納期間が5年以下なら、60-65歳の間に補うことができ、トータルの納付期間が40年に達すれば満額の年金を受け取れます。

40年に達しなかった場合は、単純に(未納期間/40年)%が支給額から減る事になります。

留学中の年金対応まとめ2パターン

①住民票を抜き留学中は年金に加入せず、帰国してから再加入
留学中はカラ期間となり、保険料支払いの負担は無いが未納期間なので年金支払額は減る事になる(しかし留学中も受給資格はカウントされ続ける)。未納分は60歳以上になってから最大5年分を払って穴埋めする事が可能。

②年金は加入、二年以内に支払いをする
住民票の有無に関わらず年金には加入しつづける(住民票を抜いた場合は任意での加入手続きが必要)。留学が二年以内であれば、帰国後に未納期間を遡って支払う。従って帰国後の経済的負担を念頭におかねばならない。そのままほっておいて二年経つと時効となり未納期間になるので注意。この未納期間は①のようなカラ期間では無いので、受給資格にもカウントされない。

◆年金リンク
国民年金って何?社会保険庁からのお知らせ
[年金]All About Japan

国民健康保険

健康保険は、日本に住所がある場合、その市町村に対して払い続ける義務がありますが、海外転出届を出すと加入自体が出来なくなります。

渡航中も加入する場合(=海外転出を出さない)

転出届けを出さずに留学・ワーホリする場合は保険を払い続ける義務があります。この場合、海外で医療機関に治療費を払った場合、治療を受けた日から二年以内ならば、指定の書類の提出をする事で日本での治療費に換算したうえ7割が返済されるようです。

ただ海外の医療機関に実際に支払った額ではなく、同等の治療を国内で受けた時の相場に対して7割となります。先進国などで医療費が著しく高い場合は、国民保険で7割を返してもらってもすずめの涙・・というケースがあり得るそうです。こういった点を踏まえると、民間の海外保険の方がカバー率は高いと言えます。

<海外の医療費を国民健康保険で請求する手順>

  1. 日本で所定の用紙を入手
  2. 海外で医者にかかり、医療費を自己負担
  3. 所定用紙に医者の記入をもらう
  4. 帰国後、記入内容の和訳を添付して役所に提出

国民健康保険ガイド:海外で治療を受けたとき(海外療養費)

渡航中は加入しない場合(=海外転出を出す)

転出届けを出すと国民保険には加入できず、自動的に解約状態となります。帰国して転入届を出すと再加入できます。しばらく保険料を払ってない場合も再加入する時の条件に影響はありません。

海外滞在中は、海外旅行保険などに加入する必要があります。留学生向けの長期・割安プランなどを提供している保険会社を利用すると良いでしょう。しかし、旅行保険(医療)は通常歯科治療が対象外であるため、渡航前に歯医者にかかることをお勧めします。

注意点として、年度途中に住民票を日本に戻すと、その年度分の保険料を支払う必要があります。例えば、3月30日に帰国すると、その年度には1、2日しかいなくても一年分の保険料を支払う義務が発生します。

ワンポイントアドバイス

日本の健康保険は純粋に治療費だけですが、一般の海外保険は治療費全額サポートや死亡時の保障、家族の航空券代、携行品の盗難や損害賠償等もついてたりするので、国民健康保険とは内容が根本的に異なる事も念頭においておきましょう。